ルー・リード、死んじゃいましたね。これから書くことはただのおっさんの思い出話なので飛ばしてもらって結構です。
中2か中3か、NHKのAM、しかも地方局(長崎)の土曜の番組で洋楽を紹介する1時間番組があった。まっ、土曜の昼だからね、割と聴いてた。
ある日、突然全く聞いたことのないグループの特集があった。ヴェルベット・アンダーグラウンド。1stの日本盤が初めて出る3〜4年前の話である。
1曲目はサンディ・モーニング。ん?変な声?こんなんでレコード出せるの?でも良い曲。
それまでサイモン&ガーファンクルとかプレスリーとか聴いてた中学生だしね。そんなもんですわ。ハード・ロックという言葉もディープ・パープルのマシーン・ヘッドで一般化したそんな時代です。
で2曲目がシスター・レイ。しかもノー・カット。AMでローカル局の昼間の番組で。
50数年生きてきて、多分今に至るまでその時以上の衝撃を受けたことはない。
なんじゃ?これ?雑音だらけやん、と思いながらもずんずん引き込まれていった。
繰り返すけどハード・ロックが定着しだした時代の話ですよ。
あのノイジーなオルガンとシンプルきわまりないリズムとそれになによりあの声。体がひっくり返ったような気がした。
そうそう多分その時にひっくり返った。音楽には表と裏があって、その裏側がなんと魅力に溢れているのかを、AMの雑音混じりのシスター・レイで体ごとひっくり返されて思い知った。
その番組のアナウンサー、次の週で「来週から北海道に転勤になります。」と言ってその番組自体も終わってしまった。ヴェルベットを流したから転勤させられたのか、または転勤が決まったから最後っ屁みたいなことをしたのかわからない。
けど、そのおかげでその後の音楽の聴き方が変わった少年が一人居たのだ。で、その少年がその後いろいろごちゃごちゃやるわけですよ。
ヴェルベットが裏か表かはもうどうでもいいことだけど、その時に裏側(当時は完全に裏だ)の魅力に気をつかせてくれて底の深さを覗く喜びを教えてくれたあのラジオ番組がなければ、多分こういう事はやってはいなかっただろうな。
影響って多分受けた人の数の問題じゃない。大きな影響を受ける人間が一人でもいれば、その後いろいろ動く。自分が大きな事をしたっていうわけじゃないですよ。でもいくつかのCDは多分この世には出ることはなかっただろうし、何人かのライヴやコンサートも実現しなかっただろうという程度のささやかなことです。
でもささやかでも人が動く影響を与えたっていうのはすごいと思う、単純に。
音楽と人の出会いっていろいろあるけどラジオで突然聴いたことのないモノに出会うっていいな〜と思うのはその時の事があるからかもしれない。
jamjamラジオに時々出させていただいてハードかつヘヴィーな選曲してますが、自分の記憶から、一人でもその音楽でそれまでの自分がひっくり返されるような体験をしてくれる人が一人でも居たら、と思いながらやってるんです。当時のNHK長崎のアナウンサーへの恩返しみたいなもんかな。
そんな勝手なことをやらせてくれるKBS京都と大友さんには本当に感謝してます。
その後高1か高2の時ようやく1stが日本盤で出て、受験で東京に来たときようやく2nd3rdを買って(新宿レコードで、しかもレコード買うのが第一目的で東京来たから受験はやる気無し、で失敗)ラジオを聴いてからようやく5~6年ぶりにシスター・レイをあらためて聴けることになるのだが。それは余談です。